彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
その後、10分以上かけて説明した。

何でこんなことに一生懸命になるのって言うぐらい、それはもう丁寧に。

その時一緒に食事していた彼は会社の上司で、別に付き合っているわけではないこと。

レストランのイケメンオーナーはその上司のお友達だと言うこと。


「あ、」って音を出したままの口の形で何か考えている様子の叔母さん。

「どうしたの?」

「私、兄さんにも言っちゃった」


本人に確認もしないで伯父さんにも言っちゃうとか、さすが姉妹って言うか。


「大丈夫。桃華ちゃん、いい人いるみたいよ?って言っただけだし」


それ、全然大丈夫じゃないじゃ。

伯父さん、お正月に会うまでに忘れてくれてるといいんだけど。


「ちゃんとそういう人出来たら報告しますからっ」

「わかったけど、その人フリーなの?」


いやいや、叔母さん。全然わかってないでしょ?その質問。


「そんな話しないので、わかりません」

「あら、そういうことはさりげなく聞いておくものよ?」


あの主任にどういうタイミングでそういうこと聞けって言うんでしょうか。

私にはそんな高度なテクは持ち合わせてません。


「…機会があれば」


そういうのがやっとで、早くこの話題から離れて欲しかった。

でも、まさかその話を聞かされた勢いでこの浴衣を買うなんて、お母さんも随分と飛躍しすぎ。


やっと話題が変わったところでみんながビールを飲みだして、私は飲めないのでもちろん麦茶。

今の話題は専ら潤兄の仕事のこと。

そう言えば潤兄ってJ社に勤めてたらしい。聞いたような気もするけどすっかり忘れてた。

望亜奈さんがJ社と合コンって言った時に興味ないから全く結びつかなかったけど。

そっか潤兄ってJ社なのか。


叔母さんは一通りの噂話を話し終えると潤兄に「ね、桃華ちゃんとお祭りいってらっしゃいよ。そしてお土産買ってきて」と当たり前のように言う。


「母さん行かないのかよ」

「だって、外暑いしここでビール飲んでた方が、ねぇ」


呆れ顔の潤兄。

叔母さんはいつもこんな感じだから、やれやれって言った様子。


「ほら、桃行くぞ?」

「え?あ、はい。じゃあ行ってくるね。お土産何がいい?」


りんご飴とか金魚とか焼きそばなんて聞こえてきたけど、それを最後まで聞いてたら潤兄に置いてかれちゃう。


「てきとーに買ってくるね」


とりあえず、金魚は食べ物じゃないからね。

そう心の中で呟いて潤兄を追いかけた。
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