彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
昼休み、望亜奈さんにチョコを渡した。
その場であけて一つつまんで見せて「桃ちゃん、これ一人で作ったの?」って。

もちろん元気に「はいっ」て答えたけど、望亜奈さんの続けた言葉に一気にテンションダウン。


「で、肝心の主任は一日外出と……」

「……はい」

「メールしてみたら?」

「メール、ですか?」

「だって、家近所なんでしょ?直帰っていったってそんな真夜中に帰ってくるわけじゃないんだし」


へ?
それって家までチョコを届けなさいってこと?


「まさか、わざわざ届けに行けとか言わないですよね?」

「わざわざ届けに行く以外に渡す方法はあるの?」


いや、ないですけど。
ないっていうか、そこまでしなくてもって思うし。
そこまでしたら部下からのただの義理チョコじゃなくなっちゃう。


「……ない、です、ね」


大きなため息を付きながら望亜奈さんはちゃんと聞きなさいとばかりに私の名前を呼ぶ。

だから私も背筋を伸ばして聞く態勢をとった。


「待ってるだけじゃ何も始まらないわよ?このチョコ誰を思って作ったの?」


望亜奈さんの言いたい事はわかる。
今日一日外だとわかって、主任のデスクの上には沢山のチョコが置かれていた。
女子一同で買ったはずなのに、あきらかにそれとは違うパッケージも見えた。


「いつまでもこのままじゃ、いつか誰かのものになっちゃうかもよ?」


いつか、誰かのものに。
そう言った望亜奈さんは、それ以上は言いづらそうにしているけど、きっとあのチョコの中に本気チョコがあるんだと思った。


「私は主任じゃないから本当の気持ちはわからないけど……あんな風に笑うのは桃ちゃんの前でだけだよ?」


ニコリともしなかった主任が少しずつ笑顔を見せてくれるようになって、あいかわらず仕事には厳しいけどそれ以外の時間ではよく笑ってくれた。

私の前だからって思ってもいいのかな?
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