彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)


「冗談はさておき、営業の話ですが……


途端真面目な顔をして、さっきの話をしてきた主任。

確かに、営業の話を聞きたいって言ったのは私だけど。
いきなりその話になっちゃうとか、主任ってやっぱり真面目っていうか。


「……なので、女性ならではの視点で店舗管理をしたら新しい試みになるのではないかと思ったんです」


途中かなり上の空だったけど、なんとなく言いたい事はわかった。
でもそれ、私にできるって思ってるのかな?主任は。


「例えば、新店の店長みたいな人が営業になるのならわかるんですが。私、ですよ?」

「はい」

「私、そういうの向いてないっていうか、そこまでの仕事が出来るはずないっていうか。……自信ないです」

「最初から自信のある人なんていません。だけど、自分の可能性を見たいと思いませんか?」


自分の、可能性?


大学卒業後、一般職で入社した。でもその先のことなんで考えてなかった。
営業事務だけしてればいいって思ってた。もっと言っちゃえば結婚までの腰掛でいいとさえ思ってた。

だから営業同行の時も戸惑ったし、店舗について意見を求めたりすることにも違和感を感じていた。
何で私?って。


「確かに営業事務は大切な仕事です。でも才能のある人にそれ以上の仕事を任せたいと思うのは間違ってますか?」


へ?才能ある人?誰?


「またはてなマークが増えたみたいですけど、天ヶ瀬さんのこと、ですよ?」


え?私?

思っていることが顔に出ているのか私の考えはバレバレで。
即座に答えてくれる主任。

でもそんなの。主任の買いかぶり過ぎって言うか。
だって私が行ったからって、意見を言ったからって、劇的に売り上げが伸びるわけない。
そもそも営業みたいな仕事は得意じゃない。


「あれは、主任の後ろにいたから見えた部分であって、自分が先頭にたってたらきっと見えなかったと思います」


私のレポートを評価してくれたのかもしれないけど、あれはあの状況だったからで。営業補佐だから見えたに過ぎない。


「けっこう。頑固ですね」


ため息混じりに言われても、これだけは譲れない。


「……よく言われます」


腰掛でさえいいと思ってた私に営業なんて無理すぎる。
そんな適当なことできるわけがない!
< 280 / 439 >

この作品をシェア

pagetop