彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)


「……」


それでですねって言ったきり、無言の主任。
私に発言する機会を与えてくれているんだろうけど。


「……。」


そう思えば思うほど、言葉を発しようとするとなんの言葉から言ったらいいのかわからない。


「あ、の。」

「はい」


そこで返事されても、困るって言うか。
お箸をおいて再び聞く態勢をとってくれている主任。
あいかわらず姿勢を正してまるで仕事中みたい。


仕事中みたいでなんかいやだけど。
今言わなきゃ絶対ダメで。


ええい、もう。


「朔也さんのところに一緒に、行って下さい!」

「いまから、ですか?」


なわけないでしょう?
主任それ判って言ってませんか?


「あの、いえ、今じゃなくて。、、、デスネ」


肝心なことが言えなくて、結局いつもゴニョゴニョとしりつぼみになる私。

だからっ
そうじゃなくてっ
言いたいのは……


「十六日はいかがですか?」


へ?
下を向いてもじもじというチャンスを狙っていたはずなのに、主任の言った言葉ですっかり顔を上げてしまった私。

きっと鳩が豆鉄砲的なあの顔してるよね?

するとみるみる主任の顔が緩んで、フッって笑ってから


「お休みの日に行くんでしょう?朔也の所に」

「えっと、あの。そうです」


……もしかして知ってて主任、私に言わせようとかした?
まさかそんなわけないよね?


「行きたいところはどこかありますか?」


行きたい、ところ?
朔也さんのレストランじゃなくて?


「“どうしても渡したいもの”も頂きましたし、お礼に」


ちょっと、それっ
主任っ、まだ言っちゃうんですか?


しかも、なんだか楽しそうにしてるし。
なんか最近主任、キャラ変わってませんか?
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