彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「はぁーい」
「堂地です」
主任に怒られるから、今日はちゃんと名乗ってから鍵を開けた。
この前なんて開けた瞬間説教されたもんね。
カチャ
「おはようございます」
「早かった、ですか?」
へ?
ドアを開けるなり主任が言うから、なんのことかわからずにいた私に、
「ご飯中、ではないですか?」
「あ、コーヒー飲んでただけです」
なるほど、って顔をする主任。
もしかして、コーヒーの香りがしたとか?
「…あ、よかったら主任もいかがですか?」
うっかりケトル一杯に沸かしたお湯。
ポットにいれたけど、帰ってくる頃には冷めちゃうし。
「あ、お湯一杯沸かしちゃって、」
て、そこまで言ってからはたと気づく。
いきなり朝から部屋でコーヒー飲めとか何言ってんの?とか思ってる?
主任は一度驚いた顔をしてから、ゆっくりと「では、いただきます」と言ってくれた。
言った時は何も考えてなかったけど、部屋に入れるってこと、だよね?
寝不足なのか朝だからなのか、頭が働いてない私は考えもなしに発言をしてしまったみたい。
でも言っちゃったものはもう戻せないから、覚悟を決めて部屋の中に入ってもらった。
「どうぞ」
「失礼します」
「あの適当にそのへんに座っててください。すぐコーヒー淹れますから」
主任のブラックと私のはミルクとお砂糖多目のカフェオレ。
「砂糖いただけますか?」
「あれ?主任ってお砂糖入れましたっけ?」
「朝は脳が目覚めるのに糖分が必要なんです」
なるほど。
甘いのが好きなわけじゃなくて脳のため、か。
朝の主任が飲むコーヒーは砂糖入りと頭にインプットして。
こんな風に部屋に招き入れなければ分からなかったことだなって思うと嬉しくなった。