彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
そこからは主任に連れられるままに子供たちと一緒にクイズコーナーでうなりながら回答をしたり、常設展示を見ながら館内を見て回った。

主任が色んなことに詳しくて、驚いてなんでそんなに知っているのかと聞いてみると常識の範囲内というお言葉。
私はさっき一緒に答えていた子供たちと同レベルらしく、感心するやら驚くやら。
実は水族館ってすごく勉強になるんだなんて改めて思った。


クリオネを展示してある水槽の前はすごく人気で順番待ち。
ちっちゃい子たちと一緒に列に並ぶ私たち。
大人たちは遠めで見てるけど、せっかくここまできたんだしクリオネはちゃんと見ておかないと。


子供たちが見やすいようになのか少し低めの水槽。
背の小さい私は見やすいけれど、主任は屈まないと見えなそうだなーって思いながら


「見えますか?主任」


って振り返ってみたら、真後ろに主任の顔があって慌てて水槽の方に向き直った私。


近い。すごい近いってば。


触れてはいないけど、もうちょっとで触れそうな距離。
混んでるんだから仕方がないけど、でも。


「実はすごい顔をして捕食するんですね。クリオネは」


なんて夢のないようなことを言い出す主任。
ほんとだ。まるで捕食シーンは悪魔みたい。
こんな天使みたいなのに、ね。

主任のヒトコトですっかり心臓のドキドキが抑えられてクリオネを冷静に観察できた。
私はこんなにドキドキさせられたりしてるのに、主任はいたって普通。
こういうの、慣れてるのかな?


クリオネを見終わると少し広いところに出て、次は円柱水槽でそこには沢山の魚がぐるぐると泳いでいた。


「うわーおいしそう」
「これだけいると圧巻ですね」


あ。
なんか私の感想って水族館ならぬ発言?
ちょっとだけ反省してると主任が隣でクックッと笑いをこらえている様子。


「天ヶ瀬さんらしい、発言ですね」


そう言ってからもまだ笑い足りないのか下を向いている肩が少しゆれている。
だって、イワシがいっぱいいたらそういう風に思っちゃうんだもん。


「……確かに、おいしそうですね」

「いいですよ、ムリにそんな風に言ってくれなくても」


魚を学術的に見るなんて事、私には到底ムリらしい。
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