彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「料理、もう少ししたら持ってくるけど、お前何飲む?」
車はないから主任もお酒飲めるんだ。
主任と一緒にお酒飲みたいな。
「あー、グラスワインでもいいけど―――」
「お前好みのを見つけておいたけど、桃華ちゃんは無理、だよね?」
無理かって言われるとそんなことない!って言いたくなる私。
負けず嫌いっていうのかな、こういうの。
「えっと、……飲んでみたいです」
「大丈夫?」
「私最近、けっこう飲めるようになったんですよ?」
だって主任の好みの味を知りたいし、主任と一緒にお酒飲みたいし。
明日も休みだから、ちょっとぐらい無理したとしても。
「おっけー。じゃあ桃華ちゃんのグラスも持ってくるね」
心配そうに主任は見てたけど、大丈夫だもん。
私だって、主任と一緒にお酒ぐらい飲めるから。
今日のメインは何かななんて話しをしながら、食前酒をちびちび飲む。
すっかりおなじみになった食前酒。
ほらね、全然平気だし。もうあの時みたいな失態はしない。…たぶん。
運ばれてきたお料理とワイン。
主任好みの味だといっていたそれは意外にも白ワイン。
目の前のグラスに少しだけ注がれる。
何年のワインでどこの地方で作られているとか主任と朔也さんが話してたけど、まったくわからないからとりあえずスルー。
貴腐ワインって言うらしい。
二人に促されるがままに一口飲んでみる。
口の中いっぱいに広がる芳醇な香りとまろやかな味に驚いて。
あ、でもやっぱりアルコールの味もする。
お酒=苦い、まずい
なんて認識は一気に覆されるぐらいの衝撃。
「どう?桃華ちゃん」
「あの、なんていうか今までに体験したことのない味です」
「あ、でも飲みすぎないでね。それも立派なお酒だから」
「はい!」
朔也さんとのやり取りを見ていた主任がやっとワインに口をつける。
「ん。うまい」
「だろ?やっぱ好み、だよな?」
「ハーフボトルだし、一人でもいけそう」
「ハハ お前も飲みすぎないようにな」
そのボトル一人で飲めちゃうんだな。主任。
ほんとはお酒、好きなんだな。