彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「あの、本当に大丈夫なんですか?」
「何が?」
「急にお家に行ったりして迷惑なんじゃ……」
「私は平気です」
「でもお疲れでしょうし、私は一人でも帰れますし。……あの、今日だって水族館なんて言ってしまって。遠いのに申し訳なかったななんて、連れてきてもらってから言うのもなんですけど……」
今日思ってたことを一気に言ったけど、私はすごく楽しかった。そんなのは私だけかもしれないと思うと申し訳ない気持ちで一杯になってそれ以上の言葉がうまく繋げなくなった。
ハァー
そんな私に聞こえてきたのは主任のため息。
そして顔を上げてみれば困ったやつだっていう感じの主任の顔。
「……天ヶ瀬さんは、気を使いすぎです」
へ?
私は主任に気を使っているつもりなんてなくて。
主任が楽しくしてくれているかどうかが気がかりなだけで。
あ、これが気を使ってるって言われてるのかな?
「今日はお礼だと言いましたよね?それに嫌だったら大体、今日、ここに。来てません」
「え、あの……」
「私への配慮も遠慮も必要ないですから」
「いえ、そういうわけには……」
「今ここにいるのは堂地主任ではなく、堂地純哉です」
???
堂地主任は堂地純哉の中の一部でしょう?それに主任は主任だし。
「いえ、わからなければいいです」
分からなければいいって言った時の主任の顔はあきらかに曇っていた。
私の理解力のなさにあきれているというよりも寂しそう?
ますます分からなくなって主任の言ったことをもう一度考えてみる。
主任じゃなくて、堂地純哉さん。
【主任と会ってるって思わないで好きな人と出かけてるって思ってみて】
そう言った望亜奈さん。
仕事モードの私じゃなかったら?
私の好きな堂地純哉さんっていう人と今一緒にいるって思ってみてもいいの、かな?
だったら、
「あの。お礼の時間ってまだ有効ですか?」
「もちろんです」
そう答えてくれた主任の顔が優しかったから、もしかしたら何か変るかもしれないと願いながら私は続けた。
「お願いがあります。