彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
あと数時間かもしれないけれど、その間だけでもいいから、主任の言う堂地純哉という人を知りたくて。


「朔也さんと話すように。私にも話していただけない、ですか?あの、もちろんその時間が有効のうちだけでいいんです」

「……。」


あ、主任黙っちゃった。
しかも苦い顔。

やっぱり、あまりにも図々し過ぎた?
もしかしてこれってお酒飲んだせいで気が大きくなったっていうアレ?


「遠慮も配慮も必要ないと言ったんですから、そのお願いはイエスと言うしかないですね」


イエスと言うしかない。なんて
ただ私は上司と部下という関係だけじゃない何かが目の前で形に見えればって。


「あ、あの、無理にっていうわけじゃないんですけど、」


ハァー


またまた主任の盛大なため息に驚いて顔を上げると、


「だから……さっき気を使いすぎだって言ったの聞いてなかったわけ?」


へ?
聞こえてきた口調が今までと違いすぎて、その状況についていけなくて。
お願いしたのは自分なのにまさかこんなタイミングでこんな風に変るだなんて。

瞬きを数回するのがやっとで、それを見た主任が


「ハハ 自分で言っておいて驚かれても」

「あ、りがとうございます?」

「なにそれ。」


いえ、なにそれは、こちらのセリフです。
朔也さんと話す様子を見ていたとはいえ、主任の、いや目の前の堂地さんの変りっぷりに。

でも何が気になるって、これを聞かずにはいられない


「どこかに、スイッチでもあるんですか?」

「しいて言えばメガネとスーツ?」


休日モードの主任はいつもそれだったと思うんですけど?


「なんで?って顔してる」

「主任って呼ばれるたびに仕事モードのスイッチ入ったから」


あ、なんかそれって私がやっぱりいけないって感じ?

主任って呼ぶからテンション下がるだっけ?望亜奈さんが言ってたのって。
ん?スイッチ入る?ならテンション下がったりしないし。

あぁダメ。頭が全然付いていけてない。


「……どうせもうすぐ主任じゃなくなるから、ちょうどいいタイミングってヤツか」

「ちょうどいいタイミング?ですか?」

「たぶん、そんな時期」


時期?
タイミング?
主任、これってクイズかなんかですか?


全く
全然
これっぽっちも
分かりませんが。
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