彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「桃、ちゃん?」
呼びかけられてハッとして目の前の望亜奈さんを見る。
心配そうにこちらを見つめる望亜奈さん。
「あ、ご挨拶、できました、」
「……なんか、あった?」
あったっていうか、なんだろ?
あれって聞き間違いじゃないのかな?
「…主任が、帰り送るって言ってたように聞こえたんですけど、そんなの私の聞き間違い、ですよね?」
さっきこの耳に聞こえた事をそのまま望亜奈さんに伝える。
だって聞き間違いかもしれないって思うし。
「はぁ?!桃ちゃんの耳にはそう聞こえたんでしょ?」
だから聞き間違いかもしれないから望亜奈さんに話してるわけで。
……そんな剣幕で言われても。
「は、い。だから聞き間違いかと……」
「そんなわけないじゃない!」
はい、すごい勢いで怒られました。
そんな事言ったって、私だってその言葉が意外すぎてそういうしかないっていうか、
「……でも」
だって、まだ二次会とか行くだろうし、主役の主任がそれに行かないとかありえないし。
「でもじゃないわよ!はい、これっ水飲んで!」
もしもこれが夢だったりしたらその水を飲んだら現実に引き戻されちゃう。
夢なら覚めてほしくない。
「大丈夫ですって。私これでも飲めるようになったんですよ?」
「え?!そうなの?」
「はい、だから大丈夫です」
怪訝そうに見る望亜奈さんにそう言ってから、またお店の人におかわりをお願いした。
「桃ちゃん、でもそれ最後にしてね」
やっぱり心配して釘を刺してくる望亜奈さん。
でも主任と話をする機会が最後かもしれない今日。
気持ちを打ち明けるのに絶好のチャンスかもしれない。
だからちょっとだけお酒の力借りちゃってもいいよね?
お酒が飲めるようになったと思いこんでいる私は、本当はもうすでに冷静な判断なんかできる状況でないことなんて気づくはずもなかった。
梅酒三杯目。
それを飲んだことをこの先後悔することになる。