彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「あれ?」
「外で待っててくれてたの、捕まえてきちゃった」
「主任?」
「主任。あとはよろしくお願いします。それと、これありがとうごさいます」
さっき主任がもらっていた花束を見せてお礼を言うと望亜奈さんはお店を出て行ってしまった。
え?何これ?
どうなってるの?
恐る恐る顔を上げてみると困ったような顔をした主任。
よろしくお願いしますって望亜奈さん、どういう……?
「天ヶ瀬さん、それ飲んだら帰りますよ」
それって、このコップの水、ですよね?
あ、でも私、たぶんうまく歩けないような気がするんですけど。
ん?帰りますよ?
主任、事務所戻るんじゃ?
「あ、あの。主任は事務所に戻るって―?」
「戻りますよ、天ヶ瀬さんの車を取りに」
ぴしゃりと言ったその言葉は、ちょっと怒っている風で。
なんか前もこういうことあったような気がする。
とりあえず、なんかわかんないけど主任怒ってるみたいだし、手元に持っていたコップの水を飲み干した。
そのコップを私から取り上げた主任は、お店の人にそれを渡し、すぐに戻ってきた。
「立てますか?」
その声とともに差し出された手。
その手の意味を考えてしまって一瞬動きが止まる。
ハァー
聞こえてきた盛大なため息に、慌てて立ち上がる私。
「あのっ、大丈夫ですっ」
「では、帰りますよ」
先に自動ドアを出て行った主任。
帰る?
一緒に?
でも事務所は?
私の車を取りに行くって何?
さっき言われた言葉を順に思い出して繋げてみたけど回答が出ないまま。
連想ゲームみたいなそんな言葉だけで、正解なんて見つけられるわけがない。
出たところで待っていた主任は、私に先に歩くように言った。
目の前の階段を上るために。