彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
階段を上りきると今度は有無を言わさず私の右手を取る主任。

なんで?
どうして?
私に触れるの?


「事務所まで歩きますよ」

「……は、い」


意味がわからない。
その手を取られたのは三度目。
迷子防止と寒さ防止。

じゃあこれは?
私が酔っ払いだから?

ここから事務所までは五分ぐらい。
主任はいつもよりもゆっくり歩いてくれているのがわかる。


「まだ、夜は寒いですね」

「そう、ですね」


主任は寒いって言ったけど、その繋がれた手は温かい。
ここから私の気持ちが主任に伝わればいいのに――

事務所には何台かの車が置いてあった。
今日、飲み会に行くために私同様に置いて行った人がいるらしい。

や、でも私お酒飲んでるし、車に乗っては帰れませんよ?

主任は私の車の前までくると、「鍵を」と言った。
鍵って私の、だよね?


「ぇ?主任事務所に戻るって、さっき」

「はい、だから戻ってきました。天ヶ瀬さんの車を取りに」


は?
どういうこと?


「また頭の上にハテナが沢山浮かんでますね」


なんて主任が笑いながら言うから、


「え?でも、」

「仕事はもちろん終わってます。ほら、帰りますよ」


握り締めてた鍵を奪われて運転席の方に歩く主任。
その様子を呆然とみていると「早く乗ってください」と言って、主任は運転席に乗り込んでしまった。

とりあえず
なんだかよくわかんないけど
家まで車ごと届けてくれるらしい

私は助手席のドアを開けで乗り込んだ。
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