彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「桃は東京、楽しかったのか?」
「へ?あ、…うん」
「東京」・「楽しかった」またもやその二つのキーワードに反応した私に潤兄は怪訝な顔。
「久しぶりに友達に会ったんだろ?」
「う、ん」
久しぶりに会った。
嘘じゃない。……友達じゃないけど。
友達じゃないよ、だって主任と私は……あれ?主任と私の関係って?
「すき」って主任に言われた。
でもそれだけで、えーと?
「どうした?桃」
夕日を見た帰り、いつのまにか助手席で寝てしまった私。
主任は、私を家まで送り届けるとそのまま帰って行った。
次の日も朔也さんのレストランのランチに一緒に行って……
今までと何も変わってない。
上司と部下として接していたころと、何一つ。
私たちはつき合っているわけでも、恋人同士になったわけでもない。
「桃?」
「え?あ、何?潤にぃ」
「ずっと箸持ったままぼーっとして、なんかあったのか?」
いけない。
私、また一人で妄想してた。
潤兄がこれ以上心配しないように笑顔をつくると、
「ん?おいしいなぁと思って、かみしめてた」
「ん、そっか、ならいいけどな」
潤兄に主任の事は話せない。
「近しい人には相談できないこともあるよ」望亜奈さんの言っていた言葉を思い出した。
あぁそうか。こういう話とか潤兄も私にはしづらかったんだ。
それからは主任の事思い出さないように、お料理と潤兄の話に頑張って集中した、つもりだった。
今日は月曜日。
まだ今週は始まったばかりで、休み明けの仕事はまだ詰まってる。
「そろそろ帰るか」
「うん」
潤兄のお土産話を聞いて、お腹もいっぱいになった。
そのまま家まで送ってもらい、お土産のパスタに調味料、何に使うのっていうものまで沢山部屋まで運んでもらった。
あとで名前をメモして、朔也さんにそれに合うレシピ教えてもらおう。
潤兄が帰ったあと、お風呂に入りながらのリラックスタイム。
のはずなのに、考えることといったら。
私と主任の関係ってなんだろう?
次の約束もしてない。
付き合おうとか、彼女になってとか言われたわけでもない。
浮かれてたのは私だけ。
考えてみたら主任は東京に住んでて、いつでも会えるわけではない。
主任が「好き」って言ったことだって、「部下として好き」だったのかもしれない。
それなのに、私。
泣きそうになる顔をもう一度洗うとお風呂から出た。