彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
昨日ジュンさんはログインしなかった。
十二時半まで待ってみたけど、こなくて。
だからヘッドセッドが届いたのを口実にメールしたのに。


ログインして挨拶だけするとみんなの会話に入らずに黙々と狩りをした。
そういえば最近はおしゃべりがメインで狩りもまともにしてなかった。
GW前はオフ会の事があってみんなそのことで色々話してたし。


十一時過ぎ。ジュンさんがログインしてきた。

文字で見ている分にはジュンさんなんだけど、声を聞いたらどうしても主任って言ってしまう。

この前の電話の時も言い直しさせられた。まるで仕事の時みたいに。
どんな小さなミスも必ず私にやりなおしをさせていた主任。
あの時とまったく一緒。
だから余計、主任って呼んでしまう。



jun: モモ、スカイプ立ち上げて。ID教えて

フトモモ天使: はい


ダウンロードだけ済ませていたスカイプ。
実際にこれを使うのは初めてで、ジュンさんからのフレンド申請をオッケーするとすぐに着信。


ヘッドセッドから聞こえてくるのは主任の声。
ちょっとこもって聞こえるのはこのマイクのせい?


『ゲーム中はこれでずっと繋いでればいいから』


確かに文字打つより早い。
でも、ずっとってなんかそれはそれで恥ずかしいような……
何話したらいいの?とか、そっちばっかり気になっちゃってゲームに集中できないっていうか。


『モモ、聞いてる?』

「え?あ、はい。聞こえてます」

『顔見れないんだから、反応して。』

「は、い。でも、あのなんていうか、」

『ん?』

「……すごい緊張します」

『うん、俺も』

「へ?なんで主任が?」

『モモ、呼び方が違ってます』


……主任の声がちょっと怖い。
しかも丁寧な感じで冷静に言われると怖さ倍増。
さっきまで普通に話してくれてたのに、主任って言った途端会社モードの主任になってる。


「す、すみません。…ジュン、さん」


文字でならいくらでもジュンさんて打てるんですけど。
だけど、声聞いたら。主任、だし。


『早く、金曜日になると、いいですね?』


主任の言葉に何故か背筋がぞわっとして。
なんというか。ブラック主任が降臨した気がします。
金曜日が待ち遠しいような、そうでないような?

耳に直接聞こえてくる主任の声に緊張しつつも癒されて。
内容にドキドキさせられて。

こんな風に相手の声が聞こえてるのっていいな。
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