彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
流れるはずの雫は主任のシャツに吸い取られてた。
だって今、正面で膝立ちした主任に抱きしめられてるから。


「ごめん、モモ。意地悪しすぎた」


驚いて涙なんてどこかにいっちゃって。
抱きしめられていたその手を緩められたから、そのまま上を向くとそこに見えたのは主任の不安そうな顔。


――そして目尻にそっと口づけられた。


その涙の跡をぬぐうように頬にも。


「やば、止まんなくなる……」


両側からがばっと引きはがしてからそう呟く主任。


「ごめ、風呂入ってくる」


ちょっと、お風呂とか、何で急にそんな展開に?

しかも私、ここに取り残されてどうしたら?

落ち着いて、落ち着いて。

えと、今日はここに泊まるんだよね。


それで、あれ?
彼女ってさっき……
私が?主任の彼女なの?

いつから?

主任が好きって言ってくれたのはそういう意味の好き?でいいの?


さっき答え合わせをしてもらったはずなのに。またもや謎が出てきて……

だめだ、落ち着こう。

そうだ。さっきお風呂に入る前に冷蔵庫に水が入っているから飲むように主任に言われてた。

ほんのちょっぴりだけど。ビール飲んだからかな?


冷蔵庫の中には見事にビールと水しかない。
来るときに何も買ってきてないから、誰かがこれを買ってきたってこと?
又一つ疑問ができて、疑問ばっかりの私の頭はパンク寸前。

コップに水を注ぎひと口飲む。

やっと落ち着いて冷静になったのはいいけど、冷静になって見えたのは主任の家のリビングで。
しかも今日ここに泊まるってさっき宣言されて……



「モモ、俺にも」

「う、わっ」


急に後ろから声を掛けられて、変な声出た。
振り向けばタオルで髪をふきながら歩いてくる主任。

メガネなしの主任にやっぱりドキッとして。

段々と近寄ってきて、…って、近すぎませんか?それ?


「ごめ、メガネないと見えないから」


見えないって言ったって。
そんなに近寄らなくても見えてるはずで。
私の持っているコップを上から手を添えてそのまま飲む主任。


「モモ、風呂は?」

「え、あの入ってきたので洗面所だけ借りていいですか」


近すぎる主任にちょっとのけ反らせて言う。
だって、近すぎる。ていうか、すごい恥ずかしい。
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