彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
着いた場所は森の中の温泉宿。
送迎バスに書かれた名前はなんとか荘とかだったから、てっきりおばあちゃんとおじーちゃんがやってるような温泉宿を想像していたのに全然違ってた。

中に入ってみれば高級ホテルのようなエントランス。

主任がカウンターで宿泊手続きを終えるとすぐに部屋に案内された。
待っている間に置いてあったパンフレットみたら外資系リゾートアンドスパって書いてあった。
良く考えてみれば、朔也さんお勧めなんだから普通の温泉宿のわけがなかった。

本館を出て、離れのお部屋?
入口に何とかスイートって書いてあったような……?
外にはプライベート露天風呂と内湯は漆塗りの浴槽?そんなの聞いたこともないですけど。


「檜風呂と迷ったけど、こっちでよかった?」


良かったもなにも。
近くに温泉はあっても地元ではなかなかいかないもので。しかもこんな高そうな……


「モモとゆっくりできればどこでもよかったけど」


又そんな甘い言葉をいう主任に、相変わらず慣れずにうつむく。


「朔也に聞いたらここ紹介されたから」

「朔也さんて、こういうのにも詳しいんですねー」

「アイツ、まめだし」


朔也さんを思い浮かべてみた。確かにマメそう。
主任とはま逆っていうか、女の子の事を御姫様のように扱いそう。
でも、昨日から主任が吐くセリフが甘過ぎて……


「モモ、」


いつの間にかすぐ後ろに来ていた主任にすっぽり包まれてた。


「コーヒー、淹れて」

「はいっ」


って、放してくれないとコーヒー淹れられないんですけど?
おなかの所でがっちり組まれた手のその上に自分の手を添えてから


「あの、手を離してくれないと淹れられないんです、けど……」

「やだ」


やだって、かわいいけど。って、そうじゃなくてっ
いつもクールで素敵な主任が実はこんなに甘くてかわいらしい一面があるなんて。
今まではいつも余裕で私ばっかりドキドキしてって思ってたけど、実は違ったのかな?


「かわいく言ってもダメです」

「モモに怒られた」

「いい子で待っててください」


主任に対していい子でなんて言っちゃったけど。
でもそう言った瞬間驚いてたけどすぐに嬉しそうに頷いてくれたから。


少しずつ、私だけに見せてくれる主任とは違うジュンさんとの関係をつくっていければいいな。
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