彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「桃ちゃん、おはよう」
挨拶をしてきたのは事業所の店舗の販売担当のアルバイト自称イケメン好きのバツイチ女子、26歳の望亜奈(モアナ)さん。
「おはようございます」
「さっき、ここに主任いなかった?」
「たった今、外回り行きましたけど」
だから私、やっと今息が普通に出来てます。
「ちぇ。そうなんだー。せっかく顔拝めるかと思ったのになー」
拝めるって、観音様とかそんなのじゃないんですけどね?
「そんなに拝みたいなら、席変わってあげたいぐらいです」
「ハハハ、ソレはムリ。私、桃ちゃんみたいに事務仕事向いてないし」
そう言いながら望亜奈さんは、着替えをするためにロッカールームへ移動していった。
店舗スタッフは全員制服着用。たまにヘルプで入ることもある女子社員も同じように制服が配布されている。
私ももちろん社内では制服で過ごしている。
だけど今日はロッカールームに行く前に堂地主任に捕まったからまだ着替えていなかった。
始業まで時間もあまりないから、慌てて望亜奈さんのあとを追ってロッカールームに急いだ。
それにしてもよかった。
今日は一日、主任いないらしいから変に緊張しないで仕事ができそう。
自分のデスクにつくと、今朝渡された書類に目を通す。これなら頑張ったら定時いけるな。
髪の毛をクリップで留めて「よし」と気合を入れなおすと書類の作成にかかった。
午前中から気合を入れて進めた仕事は定時前には終了。それを主任にメールする。
【他に急ぎのものはありません。業務が終了したら帰ってください】
返ってきたのはそんなメール。
ねぎらいの言葉とか、そういうのは一切求めちゃいけない。