幻影だとしても、

サヨナラ

それから雅人さんは、仕事終わりに必ず来てくれて
私の気分に合わせて一緒に話したり出かけたり、愛し合ったりした。

否、愛し合ったのではなく
私が彼に愛を求めていると言った方が正しいかもしれない。



「サヨナラ」



部屋を出て行く時、
必ず決まってそう言う貴方をどれだけの思いで見送ったか。
貴方にはきっとわからないでしょう?

愛している人には別に愛している人がいて、
その愛されている人は別の男と愛し合っている。
なんて皮肉な話なのだろうか。


それでも私は彼を、
彼はあの人を。

諦めることなんてできない。



「ミサ…」



何度も呼ばれて来た、私ではない名前。

何度も私の心をズタズタにしたその名前。



_____そして、何度も私が傷つけたその名前。




私はこの罪を背負いながら生きて行く覚悟はできている。
でも、それに貴方を巻き込むのは今日で終わり。
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