幻影だとしても、
その日はそのまま彼が眠りに着くまで起きていた。
すぐに眠ってしまった彼は、可愛らしい寝息を立てている。



「好きです、愛しています。」




_____ミサさんよりも。





そんな呟きは微かな彼の寝息に掻き消され
最も伝えたい彼には届かなかった。


それでもよかった。
否、その方がよかった。

彼には愛すべき家族がいて、
今夜のことはほんの気の迷いだから、
私がそれを伝えれば彼はあの大好きな微笑みを歪めてしまう。

そんなことなら彼は私の気持ちなど知らなくてもいい。
ただ今までと同じようにあの微笑みを向けてくれさえすれば。




寝るまでの間、本気で思っていた。
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