幻影だとしても、
次の日、自然と何時もより早く目が覚めた。

隣で彼が眠っていることを幸せに思いながら、
名残惜しい気持ちを抱きつつベッドを出て服を着た。
その足でそのままキッチンへと向かい朝食の準備をする。


ガチャリ。



扉を開ける音が聞こえて顔をあげれば、
そこには申し訳なさそうな顔をした彼が立っていた。



「昨日は本当に…」

「やめてください…
そんなこと言われたら虚しくなります」



謝ろうとする彼に苦笑しながらその先を制せば、
案の定納得がいかないような顔をした彼。



「こんなこと言ったらダメなんだろうけど、
私は昨日、幸せでした。
だから謝らないでください。
雅人さんにミサさんがいること、ちゃんと分かってますから」



そう言えば、彼は少し悩んでから“ありがとう”と
私の好きな微笑みを浮かべたのだった。
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