キミは俺のモノでしょ





――あの日。


「お兄ちゃんっ……」


突然悲しげな表情を向けてきた兄を、わたしは、抱きしめた。

正面から。布団の中で。


すると、兄は、眠ってしまった。

力が抜けた兄の重みをずっしりと全身で感じた。


……温もりも。


それは心地よすぎるほどにあたたかくて。


ドキドキが鳴り止まなかった。


よほど疲れていたのだろう兄は、起きる気配がなくて……。

そっと隣に寝かせ、わたしはシャワーに向かおうとしたのだけれど。


――離れたく、なかった。
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