キミは俺のモノでしょ
まただ。


また、兄はそんなことを言ってわたしを困らせる。


「もう、戻りなよ」


身を起こす兄。

気が済んだのだろう。

わたしが困ったから……。


「うららには、縁遠い話だよね。キスとか。男っ気ゼロだもんね?」

「…………」

「久しぶりに女の子と遊ぼうかな」

「……!!」

「どうしたの?」

「……ううん」


―――誰と、なにして、遊ぶの?


そんなこと聞けない。

聞いたところでどうしようもない。


わたしの知らない兄の顔が少し垣間見えただけなのに。


兄だってそりゃあ、女の子とくらい遊ぶだろうに。


……なぜか無性に、泣きそうになった。


そのとき。


ブルル、とパジャマの胸ポケットに入れていたスマホが震えた。


えらく長いあたり、メッセージでなく着信だろう。


「出れば?」

「あ、うん……それじゃ、」

「ここで出なよ」

「え……」

「ほら。はやくしなきゃ切れちゃうよ?」
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