キミは俺のモノでしょ
兄に急かされ携帯を操作し、耳にあてる。


「……もしもし」

『ごめん。寝てた?』


電話の相手は、架里奈だ。


「ううん。起きてたよ」

『お疲れのところ、ごめんねぇ』

「……どうしたの?」


夜に電話かけてくるなんて珍しい。


『実はさ、もらったのよ』

「もらった?」

『遊園地のチケット! それも四枚!』

「えっ、そうなんだ?」


兄の視線が気になって電話に集中できない。


わたしはそっと兄に背中を向けた。


『なんか期日が迫ってるからよかったら使ってって言われたの』

「いつまで?」

『今月中』

「ってことは……はやめに予定組まなきゃだね?」

『そうなんだよねぇ。永浜は日曜なら行けるって確認とれたんだけど。うらら、どうかな?』

「……大丈夫、だよ」

『雅くんは?』

「お兄ちゃんは……」


無理だ。

こんな状況で、誘えない。


一刻もはやく兄から逃げたいのに。
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