キミは俺のモノでしょ
兄だって負けていない。

普段『なんでもいいよ、着られれば』なんていってファッションに興味がないものの、モデル体型だからなんだって華麗に着こなす。

例えばいま兄が着ている税抜き980円のTシャツは、兄が着た途端にもはや特価Tシャツではなくなる。


「雅くん、来てくれてありがとー」

「どういたしまして」

「あたし、電話した柏木。柏木架里奈」

「ああ……あのときは、どうも」


笑顔で挨拶をかわす、架里奈と兄。


と、ここで永浜くんが間に入る。


「なあ、雅って呼んでいい? 来栖でもいいけどうららも来栖なわけだし」

「……かまわないよ」

「よっしゃ。じゃ、雅な。俺は永浜政次」

「セイジね。了解」


兄は誰とでも仲良くできる。

仲良くしようとさえ思えば。

この場で当たり障りのない付き合いなら、いくらでもできるんだ。


ただし、それが兄の本音であるかは別問題で。


怖いくらいに微笑み続けている兄が、わたしからしたら逆に怖い。

あとから『機嫌よく振る舞うのすっごい疲れたんだけど』ってキレられそう。
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