キミは俺のモノでしょ
「俺個人としてはいっそ出さなくても良い——と言ってやりたいところだが、面談のときに使うからな」


クラスメイトたちは伊勢谷先生のことを先生に向いてないと言っていたけれど。

今こうしてわたしに寄り添ってわたしの沈んだ気持ちを汲(く)み取ってくれて。

あんなにみんなから慕われていて。

わたしは、伊勢谷先生にとって教師は天職だと思う。


「……先生は、どうして教師になろうと思ったんですか」

「おおっ。それ聞いちゃう?」


先生がクスリと笑う。


「すみませんっ……ダメでした?」

「全然平気。でも、カッコイイこと言えねーよ?」

「え?」


「実はさ」といって、わたしの前の席の椅子をひいてそこにかける。

「俺も来栖の年くらいの頃、やりたいことなかなか見つからなくて。親にすすめられるがままに教育大学に進学して、それでって感じかな」

「先生のご両親に……?」

「うちの親、どっちも教師なんだ」

「そうなんですか」

「ああ。最初はなんとなくで目指したけど……」


なんだか懐かしむように話す先生。


「教育実習で実際教壇に立って、考えが固まった。『ああ、俺——この仕事がしたい』って」
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