キミは俺のモノでしょ
……なんだかんだ、兄は桜井さんとの会話を楽しんでいそうだ。

それもそうだよね。

あんなに可愛い子から好意を寄せられたら、わたしだったら嬉しくなりそう。


まただ。

胸が、ざわつく……。


「ねぇ」


架里奈が小声でわたしに囁いた。


「思ってることあるなら、言った方がいいよ」


思ってること……?


「うらら」


グイっと手を掴まれる。


「えっ、」

「あっちの乗ろ。俺と」


そういって、航太くんが——並んでいる列からわたしと一緒に抜けた。


「ちょっと田村」止めようとする架里奈に、「それ乗り終わったら合流するから。じゃーな」そう言い放つ。


「行こ」

「でも……」


航太くんについていくか迷っていると「震えてる」と、耳打ちされた。


もしかして。

わたしが内心ものすごく怖がってるのに気づいてくれた……?


「さ。あっち見に行こ」

「……うん」


そうしてわたしは航太くんと歩き出した。
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