キミは俺のモノでしょ
「ああ」


沈黙が流れる。

もちろんあたりは騒がしいけれど、航太くんとわたしの間の空気が張り詰めている。


「紡には」航太くんが、続けた。

「……紡が、政次にフラれたあと接触したんだ。あの子が俺に心開いてくれるまで時間はかからなかった。傷心中ほど付け入りやすいときってないし」


元々仲良かったわけじゃないの?


「あわよくば、紡のこと俺のモノにしちゃおうと思って。紡だってまんさわらでもない反応してたし。いけそうだったんだけど……頭に別の子がチラついた。美味しそうなショートケーキ目の前にどういうわけかシュークリームが食べたくなったというか」

「ケーキ……? シュークリーム?」

「結局、紡とはなにもなかった。友達でいることを選んだ。そしたら、今度は紡のやつ来栖雅に気持ちが傾いて猛アタックし始めた」

「猛アタック……」

「見たまんま。学校でも紡はあいつにあんな風に近づいてる。だけど華麗にスルーされるんだとよ。他の男ならしてくれること、来栖雅はなんにもしてくれないらしい」

「…………」

「まあ、そんなわけで紡が“使える”と思った」

「!」

「案の定、紡は俺の目論み通り二つ返事で『私も遊園地に行きたい』って誘いにのっかってきた。予想以上にあいつにベタベタにくっついてくれた」
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