キミは俺のモノでしょ
「じゃあゴキブリも怖い?」という架里奈に「それは怖くない方がおかしいよ?」とすかさず返事したのは桜井さんだった。


「……そういえばまだ小さい頃、怯えたわたしのそばにお兄ちゃんがずっと一緒にいてくれたことがあったよね」

「えー。うらら、なにに怯えてたの?」

と、架里奈。


「え……それは……」


「……うらら、もうすぐ出口だよ」

「……あ! ほんとだ。光が差し込んでる」


外に出ると眩しかった。

やっと出てこれたというのが最初の気持ち。


そして同時に。


記憶の一部が取り戻せた感覚にとらわれる。


夢だ。

とても怖い夢をみたんだ。


だからうなされて。

うなされるわたしのそばに、兄が一緒にいてくれた。

それも一晩中。


わたしはあの日、どんな夢をみたのかな。


「ねぇ、お兄ちゃん……」


兄を見上げると、


「うらら」


よくわからない圧力を感じた。

笑顔なのに。

黙れって言われてる気がした。


だからわたしは、それ以上、なにも聞くことができなかった。
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