キミは俺のモノでしょ



「……楽しかった?」

「え?」

「今日」


帰りの電車で、ずっと黙っていた兄が口を開いた。


「うん。楽しかったよ……!」


ちょうどこの時間帯は空いているらしく、車内はガラガラだ。

日曜なのに。日曜だから?


少し隙間をあけて電車の二人掛けシートに腰掛ける。


「うららはさぁ」

「?」

「俺といるよりみんなでいる方が楽しいの?」


なんだか眠そうな顔してる。

というか半分夢の中にいそうだ。

そんな兄を見てわたしも眠くなってきた。


「わたしは……お兄ちゃんといる時間も、友達といる時間も、楽しいよ?」

「一緒くたにされたくない」

「でも……」

「うららの一番は俺でなきゃ」

「え……」

「俺といるのが一番だよね?」


そんなこと認めていいのかな。

認めちゃ友達に悪い。


“うらら見てると、もうちょっと自分に正直になってみるのもありなんじゃないかなーと。思うわけよ”


ふと、架里奈にいわれた言葉が頭をよぎる。
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