キミは俺のモノでしょ
「だったら、なんでわたしを置いてくの?」


何日も帰って来ないの?

相談もなしで出て行くの?


「迷ってたと思うよ。連れてくか」

「……わたしを?」

「ああ。今も、もしかしたら待ってるかも。うららのこと」

「ほんとに?」

「グラスに水を注いでいくと、いつか溢れるよね。溢れちゃったんだよ。俺はそれを止めることはできなかったし、できるとも思わなかった。だからなるべくゆっくり注いでもらっていた」


兄がなにを言っているか、わからない。


「この家は金だけはある。……俺もいる。うららが不自由なく暮らせる環境だ。友達もできたみたいって知って余計に、安心して残すことを選べたのかも」

「!」


わたしが遊園地に出かけたから……

お土産渡したから友達できたって安心してくれたの?


「一体どうして……」

「まだ思い出さない?」

「え?」

「……仕方ないか。俺が封印しちゃったから」

「封印?」

「気づいてた。だけど知らないフリしてた」


なにに気づいていたの?

なにを隠していたの?


「この家の秘密」
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