キミは俺のモノでしょ
兄は驚くくらいハキハキと話し、顔色もさっきよりずっとよくなっていた。

病院に行って本当によかった。


「お兄ちゃん。はやく部屋に戻って横に……」

「伊勢谷になんて頼りやがって」


先生がいなくなった途端、兄から笑顔は消えた。


「……っ、ごめん。でも、」

「煙草」

「……?」

「あいつのニオイだったんだ?」

「!」

「車の中のニオイ。あの日と同じだった」

「あの日……」


わたしに煙草のニオイするって言った夜のこと?


「伊勢谷だったんだ?」

「あれは……」

「服にニオイつけられるくらいの関係なの? あいつとお前」

「違う……あれはね、お兄ちゃん」

「ああいう男が好きなの?」

「そんなんじゃないよ。先生は、わたしが頼って助けてくれただけで、」

「俺が病院で眠ってる間、二人はなにしてたの? 俺を理由にあいつと会えて嬉しかった?」
< 397 / 438 >

この作品をシェア

pagetop