キミは俺のモノでしょ
教室に着いた途端、喋ったことのない女子二人が近づいてきた。


「ねぇ、来栖さん。お願いがあるんだけど」


……ああ。またか。


「これ、雅くんに渡してくれないかな?」


昔から兄宛の手紙やプレゼントを預かることがある。


そわそわした様子でなにか手に持っていて。

媚びるような目でわたしを見てきたから、その手の依頼だとすぐにピンときた。


こんなとき、断りきれずに持ち帰るとたいがい

『そんなゴミいらないんだけど』

って兄から怒られて終わる。


兄は軽度ではあるが潔癖人間で、人からもらったものには好んで触れようとしない。


『手作りとか気持ち悪い』

『うらら、毒味してみる?』


そんなことを言って、わたしの口にクッキーを強引に入れてきたこともあった。


兄は、心のこもったプレゼントを台無しにしてしまう。
< 52 / 438 >

この作品をシェア

pagetop