キミは俺のモノでしょ
ため息をつき、わたしも自室に向かう。


母は仕事でいない。

父はきっと今日も遅くまで働いているだろう。


隣の部屋に兄がいると思うと

この家に兄と二人きりだと思うと

気が重いし息が苦しい……。


制服から部屋着に着替えていると、


――ガチャッ


「……っ!?」


兄がいきなり部屋に入ってきた。

毎度のことながらノックなんてしない。


「なに……?」


慌ててシャツに首を通す。


「まだ着替え終わってなかったの、うらら。ほんと……トロいなぁ」


呆れ顔の兄は、すっかりスウェット姿になっている。


「あれ。……塾は?」

「今日は行かないよ」

「そうなの?」

「自習するだけの日だから、どこでしても変わらないし」


手には、筆記用具と問題集らしきものを持っている。


「ここですることにした」
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