俺様野郎とパシリなあたし
笑う蓮を背中に…
通りすぎた救急車を、もう一度振り返って眺めた。
その瞬間、胸の奥がズキンと痛んで。
あたしは思った。
――…あれから時間は流れてるけど、やっぱり脳裏に焼き付いて離れない。
あの時の光景が、また頭に流れそうになって首を横に振った。
「蓮、重くない?」
「俺は明菜がどれだけデブになろうと、最強だから大丈夫だ」
「ぷっ……バカ」
デブは余計だけど、蓮の言葉に助けられた。
夕暮れの道。
二人の影が道路に映る。
涙で濡れる瞳を、蓮にバレないように手で拭った。
蓮に彼女がいないと知って。
ほんのちょっとだけ安心できた…そんな日だった。