俺様野郎とパシリなあたし






脳裏に焼き付いたあの時の光景は、今でもあたしを支配する。


「お願い…助けて」


震える声で、何度も叫んだ。


例えそれが、もう不可能に近いと分かっていても…


あたしは、そう願わずにいられなかった。


たった一つ、大切な物を失っただけなのに。


ぽっかりと開いた穴は、誰にも埋められない。


立ち尽くすあたしの頬を、止めどなく溢れる涙が濡らし続けていた。







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