俺様野郎とパシリなあたし
「どうして明菜に声をかけてやらないんですか?…明菜から目を逸らすんですか?」
「………」
「時間はもう戻って来ないのに、今この時を明菜と一緒に過ごさなくていいんですか?」
お母さんが、ゆっくりと顔を上げる。
ほんの少しだけ、目を見開いて…あたしを捉えながら。
蓮の言葉に、暖かい何かが胸に広がるのを感じた。
「…手遅れになる前に、明菜が離れてしまう前に」
まるで蓮の言葉は、胸の傷を縫ってくれているようだった。