副社長には内緒☆番外編☆
「行こう」

エントランスでタクシーを降りると、人がたくさんいるビルを香織の手を引いてショップのエリアに向かった。
「何をみるの?」
不思議そうな香織に、「どこのブランドが好き?」と聞くと、

「うーん、こことか好きかな。でも高いからたまにしか買わないけどね」
少し落ち着いた感じのセレクトショップを指さした香織を連れ立って、俺はショップへと足を踏み入れた。
カジュアルなラインからフォーマルの物まで揃う店内を、俺は見渡した。
そして隣にいない香織を探すと、ショップの端の方でニコニコしながら服を見ていた。

チッ!またか。
心の中で舌打ちをして、声を掛けられる寸前の香織の腕を引いて俺の方へと引き寄せた。
クスクス笑いながら、「どうしたの?」と聞く香織に、

「あんまり俺から離れないで。すぐに連れて行かれそう」
「誰にもついて行かないよ?」
悪戯っぽく微笑んだ香織に、俺は苦笑いしつつ
「これは?」と少し大人っぽい黒のワンピースを香織に見せた。
「すごくキレイだけど、着る機会がないよ。ワンピというより、ドレスでしょ?それ」
「でも好きなデザイン?」
アシメトリーになった、サテン地が重なったスカートのデザインは確かに普段着に着るようなものではなかった。
「デザインは好きだよ」
その言葉に、「試着お願いします」とそのドレスを店員の女性に渡し、香織をフィティングルームへと入れる。
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