王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です【サイト用番外編】
「リリー! 目をつむって五秒数えるんだ!」
そう叫ぶと、ギルバートは野犬に向かって駆け出して行った。
彼の声に有無を言わせぬ威圧を感じて、リリアンは考える間もなく目をつむる。
ギルバートは剣を鞘から抜くと、振り返り飛び掛かってきた野犬に向かってまっすぐに刃を突き立てた。
ギャウン!と恐ろしい吠え声が響くと同時に、初めて生き物を突きさす重々しい感触が剣の柄を通してギルバートの手に伝わる。
口の奥に剣を突き刺されたまま野犬は狂ったように暴れ、柄を掴んでいるギルバートの身体ごと振り回した。
「くそっ……!」
ギルバートはなんとか足を地面に踏ん張ると、掴んでいた柄に力を込めて野犬の口のさらに奥に刃を押し進める。絶叫のような鳴き声を上げて野犬が大きく仰け反った。
その拍子に剣の柄がギルバートからすっぽ抜けてしまったが、野犬はキャンキャンと甲高い声をあげて藪の中へと逃げていった。
「……やった……」
野犬の声が遠ざかっていくのを聞きながら、ギルバートは大きく息を吐く。頭に上っていた血がだんだんと落ち着いていくのを感じた。