王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です【サイト用番外編】
「ねえ、ギル、どうしたの!? もう目を開けてもいい!?」
両手で目を覆っていたリリアンが不安そうに尋ねる。
ギルバートは手についた返り血を服の見えないところで拭うと、リリアンの前まで歩いていき、そっと彼女を抱きしめた。
「もう目を開けても大丈夫だよ、リリー」
おそるおそる開かれた菫色の瞳が、いつものようにあどけなく微笑むギルバートの顔を映す。
「ギル……。犬はどこ?」
「犬は逃げちゃったよ。リリーが追い払ってくれたんじゃないか。すごかったね、さすがリリーだ」
そう言ってギルバートは腕に抱きしめた体に、甘えるようにすり寄った。
リリアンはポカンとしたまま辺りをキョロキョロと見回して、不思議そうに小首を何度も傾げる。
「どうして目をつむらなくちゃいけなかったの? 私が目をつむってる間に何があったの?」
「なんにもないよ。ただ犬が逃げるときに砂ぼこりがたったから、目に入らないように目をつむってって言っただけだよ」
「そ、そう……?」
どうにも不思議そうな顔をしていたリリアンだったけれど、ギルバートが「ねえ、もう帰ろう。僕、お腹すいちゃったよ」と甘えた声で言うと、すぐに「そうね」と答えて笑顔を取り戻した。