王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です【サイト用番外編】
「リリー、守ってくれて本当にありがとう。リリーはすごいね。勇気があって強くって。僕、リリーのことがもっともっと好きになっちゃった」
ふたりで手を繋いで山を下る道中、ギルバートは何度もリリアンに礼を述べた。
最初は自分が野犬を追い払ったことに実感がわいてなかったリリアンも、何度も礼を言われるうちに段々といつものような得意げな笑みになってくる。
「いいのよ。だって私はギルよりお姉さんだもの。ギルを守ってあげるのは当然だわ」
嬉しそうに頬を染めて言うその姿を見て、ギルバートは心の底から愛しそうに目を細めた。
——本当だよ、リリー。僕を助けてくれたのは、きみの愛と勇気だ。
実際に犬を追い払ったのはギルバートでも、彼に大きな勇気をくれたのは間違いなくリリアンだ。
彼女がギルバートを逃がそうと身体を恐怖に震わせながらも野犬に対峙した姿を見たとき、ギルバートは雷に打たれたような衝撃を受けた。
こんな勇気と慈愛は知らなかった。たった十歳の非力で小さな女の子が、友達のために自分を犠牲にする覚悟を持てるだなんて。
生まれたときから父には見捨てられ、汚い権力争いに巻き込まれて生きてきたギルバートにとって、純粋に掛け値なしに誰かを守ろうとするリリアンのその姿は尊く、眩くさえ見えた。
そしてその瞬間、彼は心に誓ったのだ。
——僕は、この少女を生涯愛し抜こう。と。