王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です【サイト用番外編】
——可愛いだけじゃないんだ、リリーは。強くて、優しくて、この世界でたったひとり、絶対に僕を守ってくれる。だから僕も守ってあげるんだ。——いつの日か必ず、この国で一番の力を持つ男になって。
決意を噛みしめるように、ギルバートは繋いだ手にきゅっと力を込めた。
するとリリアンが不思議そうな顔をして、こちらを見つめてくる。
「どうしたの、ギル。さっきのこと思い出して怖くなっちゃったの?」
同じように強く握り返してくれる手がなんだか嬉しくて、ギルバートは眉尻を下げてコクリと頷いて見せた。
「大丈夫よ。また野犬がやってきたって、私が追い払ってあげるわ。まかせて」
そう言ってリリアンはするりと手をほどくと、自分よりやや小さいギルバートの身体をギュウっと抱きしめてきた。
いつものようにほんのりと甘い香りが鼻に掠って、ギルバートはついウットリとしてしまう。
「じゃあリリー、今夜は一緒に寝よう? そうすれば僕、もう怖くなくなるから」
「仕方ないわね。それじゃあ今夜、寝室の鍵を開けておくから部屋にいらっしゃい。みんなには内緒よ?」
無防備にベッドに招き入れる約束をしてしまうリリアンに、ギルバートはこっそり苦笑を零す。
——本当はきみの匂いをいっぱい嗅いで、ちっちゃい身体にすり寄って、眠ってる隙にスベスベの頬にキスしたいから一緒に寝たいんだ……なんて言ったら、怒るかな? でも、いいよね? 僕はリリーを愛してるんだから。今夜も、大人になっても、ずっとずーっと、僕はきみだけを抱きしめてあげるからね。
そんなちょっぴり不埒で、胸ときめく熱い気持ちはおくびも態度に出さず。
「嬉しいなあ。ありがとう、リリー。大好きだよ」
無垢な天使のような笑顔で、ギルバートは微笑み返した。
ふたりは笑い合って、硬く手を繋ぎ直して歩き出す。下りていく山道の先には、モーガン邸の朱色の煉瓦の屋根が見える。
小さく愛らしい手を握りながらその屋敷へ共に帰れることを、ギルバートは心の底から幸せだと思った。