王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です【サイト用番外編】
一ヶ月前の夜、王宮に忍ばせていた密偵から使役がモーガン邸に遣わされた。シルヴィアの悪行が明るみに出て、国王による審判がくだされるとの報告だった。
それからはあっという間だった。シルヴィアとエリオットが王宮を追われたとの報告。彼女を支持していた貴族らがふたりを匿い、身を隠しているという情報。そして。
『王位継承権第一位謹呈の手筈が整いました。国王陛下はギルバート様を正式な王太子として迎えることを発表いたしました。皆が、国民が待っております。王宮へお戻りください』
在るべき処へ帰れとの、命令。
いつかこんな日が来ることは分かっていた。
むしろ、自分は生まれたときからこの日を待っていたはずだった。正当な王位継承者として陽の目を浴びる日を。
ギルバートは力強く頷いた。ようやく自分は正しい人生を歩み出せる。もう二度とあの離宮には戻らない。誰にも人生を邪魔させない。
ギルバートの心は高揚した。ようやく自分の人生を取り戻した歓喜。今まで自分を不遇な目に遭わせてきたシルヴィア達への憎悪。これから巻き込まれるであろう権力争いへの闘争心。けれど。
『……迎えは一週間後の夜明け前に寄越せ。それまでに出発の準備を整えておく』
積年の思いと同じぐらい大きな寂しさが、ギルバートの胸を覆っていた。