そんなアイツが好きだから~幼なじみと恋の決戦~


欲しいのって訊いたら『そんなんちゃうわ』って否定されたし。


いつもあたしが用意してるから、アイツは〝しかたなく〟受け取ってくれてるだけ。

怒ってるのはたぶん、仲間はずれにされたと思ってるからとか、そんなところなんだ。


……せっかく頑張って作ったのになぁ。


怜佑とぎこちないまま、このまま何も伝えられずにバレンタインが終わってしまうかもしれない。

そんな可能性、微塵も考えてもなかった。


想いを込めたチョコレートを作って、あとはあたしが勇気を出すだけだって。

さっきまでそうやって捉えてたんだから。


……そんな考え、単純すぎるよね。

良く考えればわかる話なのに……なのに今頃になって知るなんてさ。



『あたし、どうすれば──』

『梓ちゃん』


その時真剣な眼差しがあたしを貫いて、その場からぴたりと動けなくした。
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