きっと世界は
立ち入り禁止の階段を超えて、屋上の扉の前に座る。


「まあ、退屈ちゃ退屈だよなー」

「でしょ」

幼稚園から幼馴染の高田景(たかだ けい)も、私のこの気持ちをわかってくれた。

「行事だって一瞬で終わっちゃうし…。なんかこう、もっとハードでドキドキして……」

「そんなの漫画の中だけだろ」

「はいはい、知ってますぅー」

ちょっとふくれてから、甘い卵焼きを頬張る。
良く考えてみると、このお弁当も、毎日卵焼きとかウインナーとか同じおかずばっかりで退屈だ。

そんな事を考えていると、ふと左の大きな鏡が目に入った。

「立ち入り禁止の所なのに鏡って…意味が無いよね」

こんなにおおきい鏡をこんなところに置いておくのは流石にかわいそうな気がする。すると、景が何かを思い出した様に「あ」と声を漏らした。

「この鏡って、何か別世界に繋がるって噂あるらしいぜ」

「えっ?別世界?」

何それ気になる。単なる噂だろうけど、そういうのが本当だったら毎日楽しいのに…。

「なんか、ここじゃない全く違う世界を繋いでいるって。本当かどうか知らないけど」

「噂でしょ、噂。だいたい、こんな汚い鏡になんの力があるのよ…」

鏡は少し薄汚れている。
人差し指で擦ってみるけど落ちそうにない。

「お前、指が汚れるぞ」

「んー」

全く落ちる気配のない汚れに、私も諦めて指を離そうとした。その時。


「わっ…!」

急に鏡が渦を巻いた。
体が吸い込まれる。鏡が私を吸い込もうとする。

「お前っ…何してんだよ!」

「抜けない…!やだっ、なにこれ…っ」

景が私の片方の腕を引っ張る。しかし、吸い込む力は増すばかり。

そのまま抵抗を続けたが、結局私達はそのまま吸い込まれていった。
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