ケーキ屋の彼

柑菜は、2つの相反する感情を抱えながら、ケーキ屋に続く道を曲がった。


「まあ、可愛らしい」


目の前に見える建物を見て、櫻子はため息をつきながらそう言った。


それは、柑菜が初めてこのケーキ屋を見つけた時と同じ感想。


友達というものは、やはりどこか似た者同士である。


「きっと、お菓子も可愛らしいはずね」


まだケーキを見ていない櫻子は、確信を持ったようにそう話す。


そんな櫻子に微笑みかけ、柑菜はゆっくりとその扉を開けた。


ーーいつもよりも重く感じるのは、きっとあの人のせいだわ。


柑菜は、心の中で大きな深呼吸をした。


そして、心の中で渦巻く負の感情を押さえつけ、いつもの明るい表情で店内へと足を運んだ。
< 10 / 223 >

この作品をシェア

pagetop