ケーキ屋の彼
柑菜は、2つの相反する感情を抱えながら、ケーキ屋に続く道を曲がった。
「まあ、可愛らしい」
目の前に見える建物を見て、櫻子はため息をつきながらそう言った。
それは、柑菜が初めてこのケーキ屋を見つけた時と同じ感想。
友達というものは、やはりどこか似た者同士である。
「きっと、お菓子も可愛らしいはずね」
まだケーキを見ていない櫻子は、確信を持ったようにそう話す。
そんな櫻子に微笑みかけ、柑菜はゆっくりとその扉を開けた。
ーーいつもよりも重く感じるのは、きっとあの人のせいだわ。
柑菜は、心の中で大きな深呼吸をした。
そして、心の中で渦巻く負の感情を押さえつけ、いつもの明るい表情で店内へと足を運んだ。