ケーキ屋の彼
切るものを切り、炒めるものを炒め終わったところで、あとは煮込む作業だけが残っていた。
大きい鍋に入れられた具材たちは、音を立てている。
ぐつぐつという音は、食欲をかき立たせる。
そして、ちょうどよいところでカレーのルーを入れ少し待っていると、お腹を空かせる匂いがキッチンに充満してきた。
「煮込んでいる間、ちょっと休憩しようかな」
秋斗は鍋に蓋をして、リビングのソファに座った。
それに続き、涼も冷蔵庫から飲み物を取り出してテーブルの上に置き、ソファに座る。
美鈴はコップを6つ用意すると、その飲み物の横に置いた。
「カレー楽しみだね」
「カレーといえば、学食のカレーってクオリティ高くない?」
美鈴は、「よく分かんないけど、とにかく美味しいの」とそれに続けて言う。
「分かります、美味しいですよね、学食のカレー」
「そんなに美味しいの?」
唯一学食とは縁のない秋斗が、興味津々に学食のカレーについて聞いてきた。
「そう、秋斗今度食べに来たらいいよ」
「行きたいな」
柑菜はつい、キャンパス内を歩く秋斗を想像してしまう。
ーー絶対、モテるだろうなあ。
そう考えると、来てほしいとは思う反面なんだか来てほしくないような気もすると矛盾している柑菜だった。