ケーキ屋の彼
学食のカレートークに幕を閉ざした6人は、アイスコーヒーを飲みながら旅番組を観ている。
その旅番組のテーマは『京都』。
テレビに映っている京都は先取りをしていて、赤や黄色の鮮やかな風景を映し出していた。
「みんなは京都って行ったことある?」
誰かが、お決まりの質問をする。
「毎年家族と行ってるよね」
「うん」
涼と柑菜の家では、年末年始に京都で過ごすことが恒例になっていた。
だから、毎年初詣は家族とで、柑菜や涼は、友達や恋人とその日を過ごした経験がない。
「京都でデートとかしてみたいなあ……」
何気なく柑菜が言った言葉に、みんなは鋭く反応する。
「柑菜さんは付き合っている人いるの?」
唯一柑菜の好きな人を知らない秋斗が柑菜にそう質問をした。
「いや、いないですよ」
「そうなんだ」
周りのみんなは、なにを言ったらいいのか困っている様子で黙っている。
下手に何かを言っても、柑菜を困らせるだけかもしれない。
空気を呼んだ美鈴は、話題を無理やり変えた。
「そういえば、柑菜ちゃんって涼君の好きな人知ってる? 聞いてもはぐらかされちゃって」
「えっと……そういう話しないので分かんないです」
しかし、話題転換したあとの話題もまた、その場に気まずい雰囲気をもたらしてしまった。