ケーキ屋の彼

「美味しそうね」


ショーケースに並べられたケーキ、机の上に飾られているクッキー類、それらは一瞬で櫻子の心を掴んだ。


まるで、芸術と言わんばかりの美しさを持つケーキに、目を奪われる。


数あるお菓子の中でも、ここのケーキ屋で人気なものは、タルトだ。


甘さ控えめのタルト生地に、チョコやフルーツが綺麗に飾られている。


柑菜がこの前食べたタルトオシトロンは、レモンの酸味が効いて、甘いのが苦手な人にも食べられると人気の一品だ。


「なにを買おうかしら」


様々なケーキに視線を動かしながら、櫻子はどれにしようかと迷っていた。


「その前に、バースデーケーキを決めないとね」


「そうだったわね、私ったらつい」


櫻子と柑菜の視線は、ホールケーキに向けられた。
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