ケーキ屋の彼
「そうなんだ」
柑菜はその言葉に嬉しい反面、嘘をつかれたことが亜紀から友情を裏切られたような感じがして、心にぽっかりと穴が開く。
「まあ、なんとなくどっちがその嘘をついたのかは分かるけど、なにか相手にも事情があったのかもしれないよな」
涼は、空っぽになったコップに、再びジュースを注いだ。
今度会った時に聞いてみようと、柑菜は冷え切ったジュースを飲んでそう思う。
「そういえば柑菜、何か買ってなかった?」
「あ、うん、お土産買ったの忘れてた」
柑菜は、鞄の中から紙袋を取り出し、その中のものを並べていく。
姿を現したのは、可愛らしいまん丸の豆菓子。
緑やピンクとカラフルな色付けの一口サイズの和菓子は、1つ食べると止まらなくなってしまう。
「食べる?」
「うん」
お皿にそれを出すと、カランカランと音を立てる。
それがまた、食欲を引き立たせる。