ケーキ屋の彼
そう、秋斗の本心なんて誰にも分かりはしない。
恋は周りが決めるものではなくて、本人が決めるものだから。
「本当にごめんね」
「うん……美鈴さんのこと、きっとすごく好きなんだよね?」
亜紀はその言葉にゆっくりと頷いた。
先輩として、一人の人間として、亜紀は美鈴のことを尊敬している。
でも今回は、その愛情が少し暴走してしまったみたい。
「じゃあ、もう一度改めていただきますする?」
柑菜は、新たな気持ちで、今度はいつものように3人笑い合ってランチを食べたいと心から思う。
2人は笑顔で「うん」と言うと再び「いただきます」と3人で声を合わせて食事をするのだった。
先ほどとは違って、学食の素朴だけど美味しい味を味わっている柑菜は、にこやかな表情を浮かべている。
「食堂のごはん、久しぶり」
「たしかに、夏休み入ってから大学に来ることはあったけど食堂に来ることってなかったかも」
「たしかにそうね」
柑菜は、やはりこの2人の笑顔があってこその大学生活だとひしひしと感じている。
「そういえば、10月にフランスのチョコレート展が来るらしいのだけれど、どうかしら」
10月とフランスとチョコレートという単語。
柑菜は思う、『きっと、櫻子が言っているものと秋斗さんが言っているものって同じもの……』と。
「うん、いいね」
「柑菜ちゃんは?」